ドライアイの診断基準と最近の治療について
10年ぶりに改訂された「ドライアイの診断基準」をもとに、今後のドライアイの診断と治療について考えてみましょう。
ドライアイとは「目が乾いて」「不快感」や「見えにくさ」を感じる状態
2016年、診断基準が10年ぶりに改定されました。日本のドライアイの定義と診断基準の改訂(2016年版)からの引用になりますが、以下のとおりです。
ドライアイの定義
ドライアイは,さまざまな要因により涙液層の安定性が低下
する疾患であり,眼不快感や視機能異常を生じ,眼表面の障
害を伴うことがある
ドライアイの診断基準
1,2 の両者を有するものをドライアイとする
1.眼不快感,視機能異常などの自覚症状
2.涙液層破壊時間(BUT)が 5 秒以下
以前の診断基準との違いは?
今回の診断基準の一番のポイントは「涙の量は問わない」ことと、「眼の乾きやすさ」を重視するようになったことです。
これまでの診断基準では「涙が少なく」「目の表面が荒れている」が大きなポイントでしたが、明らかにドライアイと思われる患者さんが診断基準の条件を満たさず、確定診断に至らないことがありました。治療としてはドライアイの治療を行うことに変わりはありませんが、医師も患者さんも釈然としない状態ではありました。
診断基準が改定されて、「ドアイアイ」と診断される患者さんの割合はたしかに増えています。これは「涙液減少型」のドライアイよりも「BUT短縮型」や「蒸発亢進型」のドライアイの割合がもともと多いためで、ドライアイの患者さんの割合が増えているわけではありません。より臨床現場での実態に即した診断がなされるようになったということでしょう。
ドライアイの分類についてはこちらをご覧下さい。
診断基準でドライアイの治療はどうかわったか?
「ドアイアイ」という病態を「涙の乾きやすさ」という観点からとらえるようになり、点眼薬の選択が大きく変わりました。
現在ではムチンという物質に作用して涙の蒸発を抑える、安定性を上げる目的で使用されるジクアス、ムコスタUDの2種類がドアイアイ治療の中心です。この2剤は涙の状態を「継続して点眼する」ことで改善します。症状があるときにだけ点眼しても本来の効果はあまり期待できません。
これまでの点眼治療の主役だった「涙液の補充」を目的としたヒアレインなどの点眼薬は第2の選択枝となりました。ただ、涙の量が少ない人対しては依然として必要性が高いことに変わりがありませんし、涙点プラグなどの治療も検討が必要です。
また涙液の濃い人には、なみだを薄める目的でマイティアなどの点眼薬も処方しています。
そのほかにマイボーム腺とよばれる涙の脂分を分泌する、瞼の縁にならんでいる腺が詰まっていれば温めたり、マッサージをする必要があります。
眼が乾きやすい人が目薬を使うときに注意すべきこと
その目薬の目的はなにであるか、確認してみてください。
眼の痛み、異物感を軽くするために点眼しているのですか?それとも違和感がでないように眼の状態を整えるための目薬ですか?
前者であれば、症状があるときに点眼すればよいでしょう。ただ、後者であれば、具体的にはジクアスやムコスタUDが必要な状態のドライアイではきっちり回数を確保しないと本来が期待できません。