眼精疲労

眼精疲労 原因と対策

現代の生活ではどんなひとも目の疲れとは無縁ではいられません。長時間のパソコン作業、スマホ、ドライブなど目の負担は知らないうちに蓄積され、眼精疲労として、自覚されることになります。

 

眼精疲労とは

 

目の使用による眼の疲労が強くなり、なかなか回復しにくくなった状態です。見えにくさや眼のかすみ、痛みなどの目の症状だけではなく、頭痛や肩こり、吐き気など目以外の症状を伴うことがあります。

 

眼精疲労と眼の疲れの違いは?

ちまたでは、眼の疲れと眼精疲労は異なる、という話になっているようですが、「頑固な目の疲れ、それによる様々な症状」=「眼精疲労」ということでよいでしょう。

 

眼精疲労の症状

 

眼のかすみ、見えにくさ

夕方になると手元が見えにくい、帰り道に交通標識がみえにくい、という時間帯による見え方の変化を自覚し、症状が強くなると、朝方からいつもと違ってみえにくさを感じる場合はあります。

 

まぶしさ

明るい光をみると妙にまぶしい、眼の痛みを感じる、これらの症状も眼精疲労に典型的です。

 

眼の痛み

目の奥の痛み、眼球の上の痛み(目をおさえると痛い)、目の上の骨のへこんだところを抑えると痛む(眼窩上神経痛)などの痛みなどを自覚します。

痛みに限らず眼精疲労による症状は、眼そのものに問題があるわけではないので、ときに右目だけだったり、左だったり、両眼に感じられたり、と一定しません。

 

目以外の症状

頭痛、肩こり、吐き気、睡眠障害などの全身症状を伴うことがあります。

ただし、眼精疲労そのものが原因で強い症状が出るのは、過度にあっていない眼鏡を使用しているなどの場合に限られるのではないかと思います。

PCやスマホなど(以前はvisual display terminal: VDT、最近ではvisual display units: VDU)の使用が原因のVDT症候群と称される一連の症状としての、疲れ、肩こり、緊張性頭痛、頚性めまいなどがあり、そこに目の疲れによる症状が上乗せされている状態が多いのではないか、眼の疲れはあくまでも原因のひとつではないか、ということです。眼精疲労的な症状がある場合、眼にこだわらず、さまざまな視点から原因を探り、多方面からの治療を試みるべきでしょう。

眼精疲労の原因

 

眼のハードな使い方

現代の日常生活ではドライバーなどの職種を除いては、デスクワークやスマホなど近くを見ることが圧倒的に多くなっています。

眼の良い、遠くが見える人は、遠くが見える反面、近くを見るときは眼がピントを手前に調節する必要があります。近眼でメガネをかけている人も、見かけ上、遠くが見やすくなっている状態ですので、手元にピントの位置を調節する必要があります。つまり日常生活のほとんどの時間で、眼はピント調節を続けている状態です。その時間が長くなれば長くなるほど、眼にかかる負担は大きくなり、疲れてしまいます。

「ピントの位置を調整する」労力は単純に眼までの距離が近ければ近いほど大きくなります。そのため、テレビ、パソコン、読書、スマホの順に眼の負担は大きくなるイメージです。

仕事帰りにスマホで、という生活スタイルは眼精疲労に追い打ちをかけます。

 

 

強すぎるメガネ・コンタクト

見え方を助けてくれるはずのメガネも眼精疲労の原因になることがあります。

眼が疲れて見えにくくなっているときに検査をしてみると近視が実際よりも強くなっていることがあります。このようなタイミングでメガネを作り直すと、実際よりも強いメガネ、つまり本来の度数よりも強くなっている可能性あることもしっておきましょう。このようなメガネは眼に過度のピント調節を強いることになり、眼精疲労の原因となります。

 

同じような状況はコンタクトレンズでも起こりえます。最近、見えにくいとコンタクト屋でレンズの度数を上げてもらったけれど、すぐに見えにくく感じてしまう。このようなときは過矯正になっていないか、視力検査からしっかりやり直すことをお勧めします。

 

メガネを使用していない

ごくまれにメガネが必要なのにかけていない方もいらっしゃいます。自分ではみえているつもりなのに実際はあまり見えていない状態であり、無意識のうちに目がもっとみえるように調節を続けるため、眼が疲れやすくなります。

 

 

ドライアイなど

ドライアイなど目の表面の疾患があると見えている像が乱れるため、慢性的に目を疲れさせる原因となります。

 

眼精疲労の治療

点眼

眼のピントあわせに関係した筋肉の緊張を解いてくれるタイプ、眼に疲れがたまるのを抑えてくれるタイプなどがあります。点眼するだけで症状の改善が期待できるため、まず試してみるべき手段です。

またドライアイやアレルギー性結膜炎など見える像が乱れる原因となる疾患がある場合はあわせて治療を行う必要があります。

 

 

 

内服薬

一般的な内服薬、それから漢方薬にも眼精疲労に効果があるものもあります。

点眼で効果が不十分な場合、希望者には処方することがあります。

 

適切な度数のメガネ・コンタクト

 

前述のようにドライバーのように遠くを見る必要がある人と、デスクワーク中心、つまり屋内で生活している人ではメガネに要求される見え方は違います。ふつうの生活スタイルでは視力1.5などの見え方はいらないはずです。

 

また、あたらしく作るメガネが「疲れ予防のメガネ」なのか、「見えにくさ対策のメガネ」なのかしっかり決めて理解しておくことが大切です。

 

「疲れ予防のメガネ」としては基本的には午前中、眼が疲れていない状態で視力検査を受け、メガネを作ることが望ましいと思います。やや弱めにして、あくまでも眼が疲れないように競ってします。

また、「見えにくさ対策のメガネ」は一般的に夕方の運転時などのみえにくさを改善するために遠くの見え方を重視する必要があります。

 

夕方、眼が疲れて見えにくい、このようなケースが40過ぎ、とくに40後半になると目立ってきます。これは眼精疲労による見え方の変化に眼の調節力の衰え、つまり老眼的な見えにくさが加わっている状態なので、1本のめがねで対応は難しいことも少なくありません。わりきって夕方、見えにくくなった時用のメガネを用意するのも現実的な方法です。この場合は、夕方にメガネをあわせるほうがよいでしょう。

 

 

遠近のコンタクトレンズも有効な選択肢

遠近のメガネはピントの山(見やすいところ)が遠くと手元の2カ所にできます。

一方、遠近のコンタクトはピントの合う幅は遠くから手元までぐっと広がるような見え方で、眼に力を入れなくても楽に遠くも,近くも見えるようになります。見えないから遠近にするのではなく、眼精疲労対策として、楽にあれこれ見えるようになりたいときに選択しとして期待できます。ただし、単焦点レンズとくらべると癖のある見え方でもありますので、トライアルレンズでしっかり確認してから選んでください。

 

 

すぐに試すことのできる眼精疲労対策

 

作業環境の改善

前述のように眼精疲労はパソコン作業などによるVDT症候群と密接な関係があります。パソコンや机、キーボードまで距離は適切であるか、いすの高さの調節やディスプレイと周囲の明るさの違いは調節されているか確認してみましょう。

 

 

眼の周りを暖めてみる

温罨法と呼ばれる昔ながら方法で、自宅でも気軽に試せます。サラリーマンが喫茶店で温かいおしぼりを眼にあてて….あれです。眼のピントをあわせる筋肉というよりも眼のまわりの筋肉の緊張をとるイメージです。

遠赤外線で暖める装置や、使い捨てのホットアイマスクやUSBタイプのアイマスクなどが市販されていますし、入浴時に手ぬぐいをお湯で暖めて眼の上にのせておくだけでも効果はあります。

ちなみに、この温罨法はマイボーム腺機能不全によるドライアイに対しても有効です。

 

 

スマホ用メガネ

眼精疲労を自覚するようになる30-40代の人に特におすすめなのが低矯正の近用メガネ、眼鏡屋さんに行くと「スマホ用メガネ」として売られているものです。普通の近用メガネ(いわゆる老眼鏡)の加入度数は+2.0~3.0Dくらいですが、スマホ用メガネは+0.5~+1.0Dくらいの加入度数です。よわい加入でも手元を見る際の負担をへらすことができるため、眼精疲労対策としても有効です。もともとメガネをかけている人は検討してみるとよいでしょう。

 

 

ブルーベリーなどのサプリメント

一部の眼精疲労には効果が期待できるようです。ただし内服を続けないと効果も持続しません。

当院でも眼精疲労陽のサプリメントは数種類扱っていますが、診察時に医師、スタッフからサプリメントを勧めることは基本的に行っておりません。興味のある方はご相談ください。

 

ブルーライトカット眼鏡

「信じる者は…」の世界だとおもいます。液晶ディスプレイが登場したことから、そしてLED照明が一般的になり始めたころから、白色光、とくに青色光がまぶしさの原因となりうることが指摘されていました。まぶしさは目の疲れにつながります。就寝前のスマホの使用は気持ちをたかぶらせ、安眠を妨げると考えられています。

当院では

  • まず画面の明るさを調整すること
  • 眼鏡を新調することがあれば、ブルーライトカットのオプションをつけてみてもよいかも

と説明しています。

 

肩こり体操

VDT(VDC)作業に伴う頭痛、肩こり、めまいなどの症状は頚部から頭部にかけての疲れ、緊張が原因です。首や腕をまわしたり、もみほぐしたり、いろいろ試してみるとよいでしょう。