ドライアイについて
運転中やパソコンを使用しているとき、目が乾くことがよくあります。コンタクトレンズが目に張り付いて痛みを感じるようなときもありますね。 いわゆる「乾き目」、ドライアイと考えられる症状ですが、そもそもドライアイとはどんな状態でしょうか?
ドライアイとは?
「ドライアイ」と聞くと涙が少なくて、とイメージしがちですが、それだけではありません。診断基準によればドライアイの定義は次の通りです。
ドライアイは,さまざまな要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり,眼不快感や視機能異常を生じ,眼表面の障
害を伴うことがある
「目の乾燥」によって、眼の痛みや乾燥感、目の充血などが出現します。悪化すると、目の表面が荒れてくるため、まぶしさや見えにくさ、視力の低下も起こります。
パソコンやスマホなどの生活環境変化によりドライアイの人は増加傾向にあり、ビジネスマンの約1/5~1/3程度は何らかのドライアイによる症状を自覚しているといわれています。
またコンタクトレンズの使用はドライアイによる症状を誘発する傾向があります。
ドライアイの原因は?
ドライアイは目の乾燥によってさまざまな症状を起こしますが、「目の乾燥」はどうしておこるのでしょうか?
主な原因は
- 涙が少ない
- 眼が乾きやすい
の二つです。
1.の「涙の少なさ」は文字通り涙の量の少なさです。涙が少ない=眼の表面が露出して表面が荒れやすい。その結果、痛みや異物感を自覚します。
2.の「眼の乾きやすさ」は「涙を構成する成分のバランス」や「眼の表面の水濡れ性」が影響します。ドライアイの多くはこの「乾きやすさ」によるもので、軽症でも症状を自覚しやすいという特徴があります。涙がたくさん出ているはずなのに眼が乾く感じがする場合は、特にこの「眼の乾きやすさ」の関与が疑われます。
そのほかに、アレルギー性結膜炎や翼状片などほかの病気によって目の表面の状態に問題がある場合も目が乾きやすくなり、「まぶたと目の表面の摩擦」が増える結果、ドライアイの症状を自覚しやすくなると考えられています。
さらに瞬きの頻度も目の乾燥具合を左右します。通常の状態では、目が乾くと反射的に瞬きをすることで表面は目の涙で覆われます。しかしパソコンによる作業やスマホの操作中など「瞬きが減少する」ような状況では目の表面に涙が補充されるスピードよりも涙が蒸発するスピードが速くなり、結果として目が乾いてしまいます(VDT症候群)。レーシックを受けた方の場合は目の表面の感覚が低下していることが多く、目の乾燥を感じにくいために目が乾いても瞬きの頻度が変わらず、ドライアイの症状がでやすくなります。
涙の3つの成分とは?
涙は3つの成分から構成されています。目の表面側(角膜側)からムチン層、水層、油層の順に並んでいます。ムチンは結膜の胚細胞から、水は涙腺から、油はまぶたにあるマイボーム腺からそれぞれ分泌されます。これらの3つのバランスが崩れると涙の安定性や水濡れ性が崩れ、目が乾きやすくなります。
ドライアイの検査は?
外来でほぼルーチンとして行われる検査は以下の三つです。
- シルマー試験 目に検査用の濾紙を挟み、5分間でどのくらい涙がでるか調べます。
- 涙液層破壊時間(BUT) 目の表面がどのくらいの時間で乾くか調べる検査です。
- 染色試験 目の表面(角膜や結膜)を色素で染色し、表面の荒れ具合を評価します。
さらに細隙灯と呼ばれる装置で目の表面に問題がないか、まぶたの形状や状態、マイボーム腺の状態をチェックし、症状の原因を探ります。
ドライアイの分類は?
ドライアイの分類はいろいろ提唱されていますが、以下の2つに大別されると思います。
- 涙液減少型: 古典的なドライアイ
- BUT短縮型: 蒸発亢進型や水濡れ性低下型などが含まれ、自覚症状が強く出やすい傾向があります。
実際のところ、治療を考える上で大事な要素は「涙の量」「涙の乾きやすさ」「眼の表面の水濡れ性」の3つであると考えています。
ドライアイの診断基準が新しくなりましたが、検査方法は従来となんら変わりません。問題のあった検査結果のうち、どれから改善すべきか考え、治療を組み立てていきます。
ドライアイの治療は?
おもに点眼薬で目の状態を整える治療が中心です。ドライアイ以外の問題がある場合は同時に治療を行う必要があります。
点眼薬
足りない涙を補う人工涙液、涙の安定性を改善するタイプの目薬があります。
人工涙液やヒアルロン酸ナトリウム点眼液は文字通り足りない涙液を補い、眼に潤いを与える目的で処方されます。
涙の安定性を高める目薬はジクアホソルナトリウム点眼液(ジクアス、参天製薬)とレバミピド点眼液(ムコスタ点眼液UD、大塚製薬)です。いずれも涙の成分であるムチンの分泌を高める作用があり、しっかり点眼する回数を決めて使用すること涙の安定性を高めることができます。
涙点プラグ
涙が鼻に抜ける通り道を主にシリコン性の小さな器具で閉鎖し、涙を眼の表面にたまりやすくする方法です。暖めると固まるコラーゲンを使用するタイプのものもあります。涙液減少型のドライアイに特に有効です。
温罨法(おんあんぽう)
まぶたをあたためることで、マイボーム腺の機能を回復します。ホットアイマスクや遠赤外線マスクなどが利用されます。
自宅では入浴時にタオルをお湯で濡らし、まぶたに当ててかるくマッサージをすると良いでしょう。
点眼薬を使用する上で大事なこと
点眼薬の種類や点眼回数を調節し、自覚症状がでないように目の状態を整えておくことが重要です。
点眼しすぎに注意
手を洗いすぎると皮膚ががさがさになるように、目も点眼しすぎると逆に表面があれる原因になります。人工涙液やヒアルロン酸ナトリウムの点眼液は点眼の回数が多くなりがちですので注意しましょう。
いつもしみない目薬がしみてつけられない….
点眼薬によってしみやすいもの、ほとんどしみないもの、ざまざまです。
ドライアイでは目の表面(角膜)が荒れやすく、荒れてしまうと普段はしみない目薬もしみてしまうことがあります。目の異物感や痛みなどを感じることがないようにしっかりと点眼回数を意識して点眼をすることも重要です。