閃輝暗点
閃輝暗点は片頭痛の前兆
視界にぎらぎらする光が広がって見えにくい、という「閃輝暗点」についての解説です。
閃輝暗点とは
視界の中心からギラギラひかる光、模様がすこしずつ視界を遮るようにひろがっていき、数十分ほどで改善するというものです。
閃輝暗点は片頭痛の「前駆症状」として現れる目の症状です。片頭痛は女性に多く、頭痛のほかに吐き気や疲労感を伴ったり、音や光に敏感になることもあります。
ちなみに偏頭痛ではなく、片頭痛が正しい病名です。
閃輝暗点の原因は?片頭痛の原因は?
一言でいえば脳の血管の収縮、拡張が原因です。ストレスや睡眠不足、ひとによってはワインチーズなどの食べ物で起こりやすくなることがあります。
少しだけ、詳しく説明してみます。
ストレスなどのある種の原因によりカテコールアミンなどが増加、活性化した血小板からセロトニンが放出され、血管が収縮して後頭葉から始まる大脳皮質の機能低下が引きこされ、前駆症状がおこります。
血流低下の原因となる神経細胞の活動性の変化が神経に作用する物質を放出させ、血管が拡張、炎症を引き起こします。神経の炎症は頭部、顔面の近くをつかさどる三叉神経を刺激し、頭痛が起こります。
片頭痛の症状は?
片頭痛といっても、「頭の片側に限局した頭痛」というわけではありません。
上記のように三叉神経に対する刺激による痛みですので、頭痛に限らず、目の奥の痛み、顔面の痛みなど痛みの範囲や感じ方はひとによってさまざまです。頭の片側だけ痛くなる場合もありますが、頭全体が痛くなることが多いです。
片頭痛は同時に起こる症状により数多くの種類に分類されています。「片頭痛」が特に眼科と縁がある理由は頭痛の前後に眼の症状をともなうことがあるからです。 片頭痛の約20%が、この「前兆をともなう片頭痛」です。
今回取り上げた「閃輝暗点」は前兆として典型的なものです。片頭痛のなかには、この前兆のみで終わってしまうもの、つまり「前兆のみ」で「頭痛を伴わない片頭痛」もあり、眼科を受診する患者さんの多くは、この「前兆のみ」のタイプです。頭痛が自覚しても軽度なことが多いようです。
なお、片頭痛のあとに、閃輝暗点とは別の見えにくさがしばらく持続することもあります。これは「網膜片頭痛」とよばれるタイプの片頭痛で、時に閃輝暗点を伴う・伴わない片頭痛のあとにしばらく視界の一部が欠けてしまう、一時的に片目が見えなくなりますが、しばらくして回復します。網膜動脈閉塞症や黒内障の除外をする必要があります。
閃輝暗点の治療は?
頭痛を伴わない場合
一時的な見えにくさのみ、ですので、とくに治療は必要ありません。
頭痛を繰り返す場合
閃輝暗点が始まった時点で鎮痛剤を内服すると頭痛を軽減できることがあります。通常の痛み止めが効かない方は、脳神経外科や神経内科の頭痛専門医に相談してください。
頭痛と眼の症状
頭痛と「目の奥」の痛みの区別はしばしば、たいへん難しい印象があります。
わたしが脳外科の研修医時代、激しい頭痛で緊急入院させた患者さんがCTやMRIで異常なし、意識ははっきりしているのに片目が散瞳してきた、片目が真っ赤になっていたので、もしやと思って眼科の先生に相談したら「急性緑内障発作」だった、ということもありました…
急激な頭痛を伴う「急性緑内障発作」
いわるゆ「緑内障」とはあまり関係のない、急激な眼圧上昇が起っている状態です。強度の遠視であったり、白内障などが原因で起こることがあります。
急に目が痛くなって、片目が真っ赤になった、次第に片目がぼんやり見えにくくなってきた、という3つの症状が特徴です。
眼の炎症性疾患
眼が充血して、という炎症性疾患の場合でも、目の周りの組織に炎症がおよぶと痛みを伴うことがあります。「目の激しい充血」がポイントです。
はげしい充血、べったりとしたメヤニが特徴の流行性角膜炎、いわゆる「はやり目」も目の重い痛みをしばしば自覚します。
群発頭痛
20-40代の男性に多くおこる、「目の奥がえぐられれるような激しい痛み」を訴える頭痛は「群発頭痛」と呼ばれ、眼が充血し、涙や鼻水が止まらないこともあります。この「群発頭痛」は眼科を受診することはあまりないようです。
眼精疲労
眼科的には眼精疲労が頭痛、嘔吐などの症状の原因などと紹介されることが多いようです。ただ、パソコン作業後などの症状は、いわゆる「疲れ」が原因の緊張性頭痛と眼精疲労が同時に起こっている場合がほとんどであり、あくまでも眼精疲労は頭痛の原因の一つと考えるほうが自然だと思います。